ピロリ菌について


1998.6.17

ピロリ菌の胃がん促進を動物実験で初確認 学会で発表へ 

 日本人の中高年の約7割が感染しているヘリコバクターピロリ菌が、胃がんの増殖にも影響を与えているとする研究を、18日から始まる日本胃がん学会(東京都)、日本ヘリコバクター学会(北海道)で5つの研究グループが発表する。スナネズミに微量の発がん物質を与えピロリ菌に感染させると、明らかに発がんを促進したという。疫学調査で胃がんとピロリ菌の関連が疑われているが、動物実験で確認されたのは初めてだ。

 信州大第一外科の杉山敦講師らのグループは、微量の発がん物質とともに、ピロリ菌に感染させたスナネズミと感染させないスナネズミについて40週間、経過観察した。感染群では76匹中15匹が発がんしたのに対し、非感染群は80匹すべて発がんしなかった。

 大分医科大第二内科の藤岡利生助教授のグループも、発がん物質を与えたスナネズミを52週間、経過観察。ピロリ菌感染のない群で2割弱だった発がん率が、感染群で7割近くになった。愛知県がんセンター研究所や武田薬品工業、吉富製薬の各グループも同じような実験結果を得た。

 米国の疫学研究では、胃がんの6割がピロリ菌によって発がんしたとの報告がある。ピロリ菌感染者の胃がん発生率は通常の3倍以上という。

 この春まで厚生省研究班の班長を務めた北海道大第3内科の杉山敏郎講師は「これでピロリ菌と発がんの因果関係がほぼ明らかになった。発がんした感染動物のモデルができたことは、発がんの仕組みを解明するきっかけにもなる」と話す。


けんこう通信トップへ