時差に追い付け

 時差ボケは、旅行者だけに影響するのではなく、シフト体制で働いている人や軍に務める人、その他不規則な時間割で暮らしている人全員に影響します。この種の問題に繰り返しさらされている上に、高いレベルで能力を発揮することが求められているフライト・クルーたちは、特に大きな影響を受けています。

 最近の科学的発見に、人間の体の機能や健康には光が重要な役割を果たしている、ということがありますが、ではそれを時差ボケ修正にどう利用するかということになると、これまでのところ、あまりうまい方法がありませんでした。人間は、自然界の一部ですから、樹木や花や野性動物のように、日光からいろいろと重要な影響を受けているのです。「ネイチャー」掲載のあるリポートではこう書かれています。「人間は、当初思われていたよりもずっと光に敏感であり、“概日周期(サーカディアンリズム)の受容”という点では、他の哺乳類と実質的に変わるところはない。」

 “概日”とは、“1日の間”という意味ですが、工業化社会で生きる人たちには“(時計で計った)24時間”と言ったほうがピンと来るかもしれません。“受容”というのは、“それに従っている”というような意味です。人間や他の生き物は、体内の生体リズム、つまりホルモンその他の要素によって調整されている体内時計に従って、目覚め、眠り、活動をしています。そして光こそが、我々の体に対し、今は起きるのがいいのか、何か活動をするのがいいのか、それともぐっすり眠るのがいいのかを知らせてくれる、重要な鍵なのです。

※体内時計:
 体内時計は人間の活動・食事・睡眠などの生活リズムをコントロールしています。人間は、1日24時間周期で生活していますが、体内時計のリズムは25時間周期で動いています。この体内時計のリズムを“サーカディアンリズム”といいます。




体内時計

 3つ以上の時間帯を横切って長期旅行をした後に、睡眠パターンがおかしくなる、という経験をしたことがある人は、概日リズムが乱されるとどんなに不愉快であるか、良く知っています。1日もしくはそれ以上にわたって、時計に準じた体の機能が、追い付いてこないという経験をするのです。それでも、西向きの旅行は、東向きの旅行に比べると、ストレスが少なくて済みます。体内時計は、早めるより、遅らせるほうが楽だからです。そういうわけで、1日の時間を2〜3時間長くしても睡眠パターンがこわれることはありませんが、1日を2〜3時間短くするとなると、ほとんど必ずといっていいほと、おかしくなるというわけです。ところが、光は、このように混乱した体内の生物時計をリセットするための手段となるらしいのです。ある小規模な一連の研究で、一定量の光を浴びると、概日リズムを、最大12時間まで、前後にずらすことができることがわかりました。「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・リズムズ(生体リズムジャーナル)」に最近掲載されたリポートによれば、時差ボケ治療のために光を浴びるという方法が、なかなかの成果を上げたという研究もあれば、ダメだったという研究もあるそうです。また「ネイチャー」掲載のリポートによれば、太陽の光ほど明るくない光でも、充分に生体時計を同調させることができるようだ、ということです。普通、時差ボケを元にもどすには2〜3日あれば充分だということは、誰でも知っていますが、では年がら年中、週単位でシフトが変わる工場労働者の場合は、どうなるのでしょう。考えてみてください。




お勧めしたい時差ボケ解消法

□ 旅行する際は、睡眠障害を起こしそうなものごとはできるだけ避けてください。アルコールやカフェインは睡眠パターンをこわすおそれがありますので、飛行機の中では、それらを避けるか、量を控えてください。大量の水分を摂ると、トイレに起きるため充分に眠れなくなることもあります。重い食事も、深い眠りを妨げることがありますので、これも避けるようにしてください。

□ 夜間飛行では、睡眠マスク、目の周囲をぴったりと覆うタイプのサングラス、ネック・ピロウ(首あて枕)、毛布、その他、少しでも眠れる状況を作るための小道具を活用してください。できるなら、ストレッチもしてみてください。

□ 東向きに旅行するときは、旅行に出る3日前から、毎日、就寝時間と起床時間を、前日より1時間ずつ早めるようにしてください。また西向きに旅行する際は、3日前から、前日より1時間ずつ遅く寝起きするようにしてみてください。誰もがそう簡単に睡眠時間を変えられるというわけではありませんが、それでもやってみると、けっこう役に立ちます。

□ 新しい時間帯地域に着陸したら、できるだけ早く、そこの時間に合わせて食事や睡眠をとるようにしてください。疲れているのに起きていなければならなかったり、体が夕食の時間だと主張しているのに朝食をとったりするはめにはなるでしょうが、そこは我慢です。

□ 長期間の旅行から戻ったら、できるだけ日光を浴びるようにしてください。もちろん、日焼けには注意をしながらです。日光浴で体を悪くするということはありませんし、それどころか、時差ボケを元に戻す役に立つかもしれません。

(カリフォルニア大学バークレー校ウェルネス・レター 第13巻第5号より)

付記:

 朝晩良質な栄養を摂ること、そして充分な運動をすることは、両方とも、時差ボケを修正する能力を高めるのに役立ちます。また、体内で作られる天然のホルモンであるメラトニンが、概日リズムを調整して自然な睡眠パターンを作るのに役立つことも、わかってきています。


 (この記事は、米国LPI社のヘルス・リサーチ・レビューという健康新情報紙を翻訳したものです。)



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